CITIZEN DEVELOPMENT PROGRAM — INFRA ALTERNATIVES
「社内にサーバーを立てられる人がいない」「Proxmoxのような仮想化基盤は準備が大変そう」—— そんな場合でも市民開発は始められます。GitHub と AI壁打ちの仕組みはそのままに、 アプリの実行場所だけを差し替える4つのパターンを紹介します。
開発の流れ(VSCode+Claude → GitHub → Actions で自動デプロイ)は全パターン共通。差し替えるのは矢印の先、アプリが動く場所だけです。
FIG. 1 — 差し替えポイントの全体像
つまり:Proxmox は「アプリの置き場所」のひとつに過ぎません。GitHub Actions の deploy 先の設定(数行)を書き換えるだけで、同じワークフローがどのパターンでも動きます。
上から順に「社内に閉じる度合い」が高い順です。扱うデータの機密性と、かけられる手間で選びます。
使わなくなったPCやミニPC(1〜3万円)を1台、社内に置くだけ。Proxmoxのような仮想化基盤は不要で、Docker を入れてアプリを動かします。
ポイントは Cloudflare Tunnel。PCから外向きにトンネルを張るため、会社のルーターのポート開放が一切不要です(情シスに嫌がられる作業がない)。さらに Cloudflare Access を組み合わせると、指定したメールアドレスの人だけがアプリを開ける状態にできます。
DIAGRAM P1 — TUNNEL + ACCESS
「参加者の端末どうしだけをつなぐ、見えない専用ネットワーク」を数分で作れるサービス。アプリを動かすPCと参加メンバーのPCに Tailscale を入れてログインするだけで、お互いが専用アドレスで直接つながります。
ネットワークの外からはアプリの存在自体が見えないため、閉域性は4パターン中で最も高め。難しいVPN機器の設定は不要です。
DIAGRAM P2 — PRIVATE MESH NETWORK
サーバー管理を丸ごとクラウドに任せるパターン。Google Cloud Run や Azure App Service / Container Apps にコンテナを置けば、電源・OS更新・故障対応から解放されます。GitHub Actions からの自動デプロイとの相性も抜群です。
「社内限定」は認証で実現します。Cloud Run なら IAP(Identity-Aware Proxy)、Azure なら Entra ID 認証を有効にすれば、会社の Google/Microsoft アカウントを持つ人だけがアクセスできます。会社が M365 や Google Workspace を使っているなら特にスムーズです。
DIAGRAM P3 — MANAGED CLOUD + AUTH
「GitHub リポジトリを接続したら、もうデプロイ完了」の世界。Actions の設定すら不要で、push するたびに勝手に公開URLが更新されます。要件定義書・UIモックのようなHTML資料の共有や、Streamlit 製の簡易ツールの公開に最適です。
ただし注意点として、無料枠はURLを知っていれば誰でも開ける公開状態が基本。パスワード保護やSSO制限は有料プランになることが多く、商用利用の条件もサービスごとに異なります。機密データを扱わない初期プロトタイプ専用と割り切るのがおすすめです。
DIAGRAM P4 — ZERO-CONFIG HOSTING
迷ったら「扱うデータの機密性」を最初に考えてください。それが許容範囲なら、あとは手間の少ない順に選べばOKです。
| 項目 | P1 余りPC+Tunnel | P2 Tailscale | P3 クラウドPaaS | P4 ホスティング |
|---|---|---|---|---|
| 初期費用 | △ ミニPC代(1〜3万円) | ◎ ほぼゼロ | ◎ ほぼゼロ | ◎ ゼロ |
| 月額費用 | ◎ 電気代程度Cloudflare 無料枠内なら | ○ 無料〜数百円/人 | ○ 無料枠〜従量課金 | ○ 無料枠あり業務利用は要プラン確認 |
| 社内限定の しやすさ |
◎ Access で門番設置 | ◎ ネット自体が見えない | ○ 会社アカウント認証 | △ 無料枠は基本公開制限は有料になりがち |
| 構築の手間 | △ 半日〜1日 | ○ 1時間程度 | △ 半日程度クラウドの学習込み | ◎ 5分 |
| 向いている段階 | 本格プロトタイプ〜常用Proxmox 構成の代替 | 機密データを含む検証少人数チーム | 部署展開・常時稼働スケールも視野 | 資料共有・初期デモステップ02〜04向け |
2つの質問に答えるだけで、スタート地点が決まります。あとから乗り換えるのも簡単です(Actions の deploy 先を変えるだけ)。
FIG. 2 — パターン選定フローチャート
おすすめの育て方:P4 で最速の壁打ち → 手応えが出たら P1/P2 で社内に閉じる → 部署展開で P3 へ。どの段階でも GitHub 上のコードと開発フローはそのまま引っ越せます。
どのパターンでも共通のチェックポイントです。特に会社の情報を扱う場合は、先にここをクリアしてください。
情シス・上長への事前相談「社外サービスに業務データを置いてよいか」「PCを常時稼働させてよいか」は会社のルール次第。P4→P1と勝手に進める前に、扱うデータの種類を明示して相談しておくと後がスムーズです。
機密データは「置き場所」を最初に決める図面・原価・顧客情報などを扱うなら、クラウドに置く前に必ず確認。迷ったら、まずはダミーデータでプロトタイプを作り、本物のデータは社内(P1/P2)に閉じてから接続するのが安全です。
無料枠の「落とし穴」を知っておく無料プランはアクセスがないとアプリがスリープする、商用利用に制限がある、独自ドメインが使えない等の条件があります。壁打ち段階では問題ありませんが、常用を始める前にプランを確認しましょう。